黒毛和牛の美味しいローストビーフの作り方~牛肉の選び方から調理法までシェフがコツを教えます~

ローストビーフ

おもてなし料理の定番ローストビーフは、牛肉のジューシーな美味しさを堪能出来るのが魅力ですよね。こだわって大きなかたまり肉を焼くという調理はワクワクもしますが、上手く出来るかちょっと不安にもなります。

ローストビーフを作る時に難しいのは、味付けと、火入れの加減です。出来上がったローストビーフに包丁を入れた時、絶妙なロゼ色の断面が出てきたら、作った本人も嬉しいですよね。さらに高級なブランド和牛で美味しく作れたら、ゲストに大絶賛されるのは間違いありません。

今回は、難しそうで意外と簡単に作れるローストビーフのプロも実践している調理のコツをお教えします。

 

ローストビーフ用牛肉の選び方

ローストビーフは塊肉をじっくり焼いて、薄くスライスして供する料理ですが、中はロゼ色の半生の様に仕上げ、冷やした状態で食べることもある料理ですから、肉の鮮度には気をつけなければいけません。また、食べやすさの点から部位も適切なものを選びたいですね。

ローストビーフ用の牛肉の選び方を解説します。

 

ローストビーフは赤身部位が向いている

ローストビーフ用の牛肉は、脂のりの少ない、赤身肉が向いています。
具体的には、モモ、ロース、ヒレが適しています。

脂の少ない赤身肉「モモ肉」

ローストビーフを作る際の大定番の部位。牛肉の部位の中でも脂肪分が少ない赤身の部分で、しっかりと噛み締める旨味を楽しめる部位です。

お値段も比較的安く、気軽にローストビーフを楽しむことができます。

脂と赤身のバランスのよい「ロース」

脂と赤身のバランスが良く、きめ細かい肉質で濃厚な肉の味を楽しめます。リブロース、サーロインなども含まれ、ステーキでもお馴染みの部位ですが、食べやすさの点から、脂や筋の多くない部分を選びましょう。

赤身なのに柔らかい高級部位「ヒレ」

脂肪分が少なく、最深部の赤身の最高級部位です。しっとりと柔らかく上品な旨味が楽しめる肉質はローストビーフに最適です。

 

ブランド和牛を選ぶ時は?

ブランド和牛は、脂と赤身のバランスが良く、きめ細かく入ったサシが特徴なものが多く、冷やして食べることの多いローストビーフは、脂が多いと冷めた時食感が固かったり、脂の口当たりが気になるので、脂のりの少なく、きめの細かいものを選ぶと良いです。
ブランド和牛の場合、赤身肉と言えども、適度に脂が入り、上品でとろける口溶けや濃厚な肉の味を楽しめます。

 

購入時の注意点

変色のない、加工年月日の新しい、鮮度の良いものを選びましょう。
近年、熟成肉ブームなどで寝かせて熟成させた牛肉はアミノ酸が増えて美味しい、と言われていますが、プロの経験と知識のもとできちんと処理された牛肉を扱い、調理していますので、一般家庭での熟成は食中毒のリスクが高まるので止めた方が良いでしょう。
また、筋や脂身は焼いたあとスライスしても噛み切りにくいので、あまり入ってないものを選びましょう。

 

ローストビーフの1人前は?購入量の目安

ローストビーフはレストランなどではだいたい、1人前100gから150gくらいで計算されています。人数に合わせて量を計算しましょう。ただ、店では大量に仕込んで、切り分けてサーブしますから、家でも大きなかたまりで焼きたいので、小さくても300g以上は欲しいところです。

 

おうちでもプロの味!~美味しいローストビーフの調理レシピ~

では、厳選して牛肉を仕入れたら、ローストビーフの調理にとりかかりましょう!

ローストビーフの調理の重要ポイントは、下ごしらえ、火の入れ方、カットの仕方、合わせるソースです。上質な牛肉であれば、ただ塩胡椒で焼いただけのシンプル調理でも充分美味しいのですが、プロの調理法でお肉の美味しさをさらに引き出しましょう。

この中でも簡単そうにみえて一番大事なのは、「カット」の仕方になります。筋にあわせて垂直に包丁をいれることで、柔らかな触感のローストビーフにしあがります。

下ごしらえから順にみていきましょう。

 

ローストビーフ用肉の下ごしらえのコツ

① 肉の表面に残っている余計な薄皮、脂、筋、変色部分があれば削ぎます。(トリミング)
② フォークで表面を満遍なく刺します。塩胡椒をすり込みます。(肉の重さの1.2%の塩)
③ そのまま常温で1〜2時間置いておきます。

一番シンプルな下ごしらえは以上です。
他に、塩胡椒を牛肉を香味野菜や赤ワインと共にマリネして冷蔵庫で一晩おく方法もあります。香味野菜(玉ねぎ、にんにく、ハーブなど)や赤ワイン、料理酒などは風味づけなので、素材の味を活かしたい美味しいブランド和牛には、好みで使いましょう。マリネした時も、焼く2時間前には室温に置き、肉を常温に戻しましょう。

 

ローストビーフの調理法

ローストビーフの下ごしらえができたら、焼いていきましょう。オーブンを使う場合、フライパン(鍋)を使う場合、炊飯器を使う場合など、持ってる調理器具によって美味しく作れる方法があるので、ご紹介します。

※肉の重さは500gくらいのブロックを例にしています。

オーブンを使う場合

① オーブンを200度に余熱しておく。
② 玉ねぎ1個を皮むいて横に厚めに輪切りにする。にんにく半分はつぶし、タイム5本、ローリエ2枚と共に、耐熱性のバットに並べ、下ごしらえした牛肉をのせる。
③ 肉の上からオリーブオイルを回しかけ、オーブンに入れ、20分焼いたら、上下をひっくり返し、バットに落ちた脂を上からかけ、さらに20分焼く。
④ いったんオーブンから出し、アルミホイルで肉を包み、火を消した(もしくはスイッチを切った)オーブンに戻入れ、20~30分置き、余熱で中までじっくり火を入れる。

フライパン(鍋)を使う場合

① 玉ねぎ1個、にんにく2かけをスライスして、フライパンでしんなりするまでソテーする。一度取り出し、脂を少し足して、牛肉を焼き始める。
② 一面につき1分ぐらいずつ、中火で面を変えながら焼いていき、2周して全面にまんべんなく焼き色がついたら、肉に①の野菜をまぶしつけ野菜ごとアルミホイルで包み、フライパンに戻してふたをして、いったん火をつけて、1分ぐらいしたら火を止め、そのまま30分から1時間ぐらい置いておく。

炊飯器を使う場合

① フライパンで焼く場合と同様に、香味野菜を炒めて取り出し、牛肉の表面を焼く。
② 耐熱性のジッパー付きビニール袋に香味野菜と肉をいれ、しっかり空気を抜いて口を閉じる。
③ 炊飯器にお湯を張り、②の肉の入った袋を沈め、40分から1時間、保温モードで保温しながら火をいれる。

※オーブンや炊飯器は機種により温度調節機能が違うので仕上がりを見ながら調整ください。

 

話題の低温調理は食中毒に注意!

牛肉のタンパク質が変性しない温度帯で加熱することで、肉がジューシーに柔らかく仕上がるという、流行りの低温調理、気になりますが、食中毒の危険性も警告されています。
厚生労働省指導の食中毒予防の観点では、牛肉でも中心温度が75℃1分以上加熱することとされています。低温調理は周りを焼いたあと、袋に密閉していれ、50〜60℃のお湯につけて1〜2時間火を入れるのですが、肉の中心温度は70℃で3分、65℃で15分、63℃で30分、58℃では126分加熱しなければならないという基準があります。低温調理にトライするなら、加熱時間をかけるか、電子温度計などで中心温度をしっかり測り確認しながら調理しましょう。

 

ここがポイント「切り方」・「盛り付け」のコツ

上記の工程では、余熱で肉に火をじっくり通しながら、肉汁を落ち着かせているので、あとはスライスして盛り付けるだけです。冷製で使いたいときは、肉の加熱時間が終わったら、袋に入れて密閉し、流水につけるか、冷気の強い冷凍庫にいれ、急冷します。また、保存性も高まります。

ローストビーフを切り分けるときのコツは、肉の繊維方向に直角に、繊維を断ち切るように薄くスライスします。こうすると、食感が柔らかくなります。

サラダやオニオンスライスなどの付け合わせと共に、きれいに並べて盛り付けましょう。少しずつスライスした肉をずらしてまな板に置き、端からくるくる巻くと薔薇のようになります。

 

おススメのタレ

◎グレービーソース
肉を焼いたあとのフライパン、もしくは肉を乗せていたバット、肉を入れていた袋に残っている野菜と肉汁に1カップのブイヨン(チキンコンソメ+水でも可)を足して小鍋で煮立て、いったん濾します。残ったスープに白ワインか赤ワイン大さじ1、醤油大さじ1を加えて、1/2、寮くらいまで煮詰め、バター10gを加えて、よく混ぜます。とろみをつけたいときは、水で溶いたコーンスターチか片栗粉を少々加えてとろみつけます。
ローストビーフの肉汁を活かしたソースです。

他に、わさび醤油やポン酢でさっぱり食べるのもおススメです。わさびもできればホースラディッシュ(西洋わさび)が合いますね。

 

残ってしまった和牛ローストビーフを使った美味しい朝ごはん

食べきれずに残ってしまったローストビーフのアレンジ活用術をご紹介します。冷蔵庫で一晩置いたローストビーフは固くなったり、パサパサになっているので、そのまま食べるよりは、少し温めた料理がおススメです。また、消費期限はスライスしたものなら冷蔵庫で1日、かたまりなら冷蔵庫で2.3日、冷凍で1週間を目安に食べきりましょう。

是非、残ったときの朝ごはんやアレンジの参考にしてくださいね。

 

◎ローストビーフサンドイッチ

パンに(トーストでも可)バターを塗り、レタス、トマト、目玉焼きなどとともにローストビーフを重ねて、グレービーソースとわさびマヨネーズをかけて挟みます。

 

◎ローストビーフ寿司

ローストビーフを軽く炙ったら、酢飯で作ったシャリ玉の上にのせ、西洋わさびがおろしわさびとかいわれ大根などをあしらいます。

 

◎ローストビーフ丼

温かいご飯を丼に盛り、軽く温めたローストビーフを乗せて、照り焼きソースかグレービーソース、わさび、温泉玉子をのせます。トリュフオイルをかけると高級感がでます。

 

まとめ

・お肉選びは赤身肉から選びましょう。迷ったら「モモ肉」がおすすめ、贅沢なローストビーフには「ヒレ」がおすすめです。黒毛和牛の赤身は、赤身でありならがら適度にサシがはいり、柔らかく仕上げることができます。

・お肉の量は1人あたり100~150gが目安。最低でも300g以上で調理するのがおすすめです。

・調理後のカットは、お肉の繊維に対して「垂直」に包丁をいれましょう。そうすることで、柔らかなローストビーフを楽しむことができます。

ぜひ、こちらを参考にして頂き、美味しいローストビーフを楽しんでください!

 

関連記事

コメント

  • コメント ( 0 )

  • トラックバックは利用できません。

  1. この記事へのコメントはありません。