黒毛和牛・牛肉の「トモバラ」とは? 部位の特徴、小割りできる希少部位、美味しい焼肉・カルビの食べ方をご紹介します!

仙台牛 タテバラ

焼肉屋さんでカルビとして提供される部位として有名な「ばら肉」。この「ばら肉」は「肩バラ」という部位と、今回ご紹介する「トモバラ」という2種類の部位のことを指します。
特に「トモバラ」は、数々の希少部位を始め、並カルビから特上カルビまで焼肉のメイン材料がザクザク取れる宝庫となっています。

「トモバラ」という部位全体の説明は全部位紹介の記事で記載しましたので、今回は「トモバラ」から小割りできる数々の希少部位の説明、美味しい食べ方を中心にご紹介させて頂きます。

 

牛肉の「トモバラ」はどこの部位?

 

まず「トモバラ」とはどこを指すのでしょうか。
この画像内にはトモバラという部位は見当たりませんが、「中バラ」「外バラ」を合わせて「トモバラ」と呼びます。
それぞれ牛の肋骨周り、お腹の部分の部位です。
お腹だけあって脂がとても多く、肉のブロックを柵取りするために脂を落として成形していくと、6割ほどがなくなってしまいます。
赤身肉と脂肪が交互に層を成しており(脂肪交雑)、一緒に焼くことで濃厚な味を楽しむことが出来ます。
基本的には焼肉で食べることが多いですが、薄く切ってバラしゃぶにしたり、一部の希少部位はステーキで楽しむことも出来ます。

「中バラ・外バラ」から小割りできる部位

それでは早速トモバラを小分けしていきましょう。
まずは、「ナカバラ」と「ソトバラ」の両方に付いている部位から。
どちらの表面にも「カッパ(フランケン)」と呼ばれる薄い肉が張り付いています。
こちらを取り外してから内部の肉を解体していくのですが、「ゲタ・バラ山」と呼ばれる中落ちカルビ材及び「カブリ」という並カルビ材も両方についています。
次に希少部位ウチハラミというハラミに似た食感の部位も両方にまたがって付いているので綺麗に取り外します。
そうすると、ナカバラに「カイノミ」「ボンショー」、ソトバラに「ササミ(ササバラ)」という希少部位がそれぞれ残ります。
これも切り分けると、ナカバラには「プレート」が、ソトバラには「タテバラ」「ヨコバラ」が最後に残ります。

それでは、それぞれの部位をご紹介していきましょう。

 

トモバラ随一の高級希少部位「カイノミ」

中バラから取れるカイノミは、レストランでもよくメニューに並んでいますので、聞いたことがある方も多い部位かと思います。
小割りした際の形が貝に似ているところから命名されたそうですが、個人的には貝にはあまり見えず、ロールパンやクロワッサンの方が近い形な気がします。
中心部分が太くなっており、端に行くにつれて薄くなっていく独特の形です。
トモバラの中でも屈指の高級な希少部位ですが、その理由は、牛肉の中で一番高価な「ヒレ」のすぐ近くにあり、肉質が似ていることにあります。
「ヒレ」は赤身肉の最高峰かつ一番値の張る部位で、赤身肉の上品な美味しさと柔らかさが特徴ですが、カイノミもバラ肉でありながら同じ特徴を兼ね備えています。
取れる量もヒレと同じく非常に少なく、成形すると1頭から3kg程度しか取れません。

真ん中でカットすると斜めに特徴的なサシが入っています。

和牛カイノミ カット

和牛 カイノミ カット

 

本来牛肉は繊維の方向に直角に切っていくのが基本なのですが、カイノミは非常に柔らかいため、繊維と同方向に切ると違った食感が楽しめます。

和牛 カイノミ カット

 

写真上が本来のカット方向、下が繊維方向にカットしたものです。

同じ部位でもカット一つで全くサシの入り方が変わって見えますし、実際に柔らかさも違います。

 

カイノミの美味しい食べ方

上記で説明したカットの方向でもかなり変わってくるのですが、繊維方向に切るとハラミのような食感になりますし、本来の方向に切るとヒレのようにサクッと口の中でほどけます。
食べ方は2種類で、中心の太くなっている部分はステーキとして、それ以外の部分は焼肉にするのが一般的です。
ステーキの場合、焼き加減はミディアムレアにして、わさび醤油や塩胡椒で食べてみてください。
焼肉の場合は、レアかミディアムレアで、塩か甘めのタレがお勧めです。
どちらの場合も焼き過ぎると固くなってしまうのでご注意を!

 

特上カルビと言えばこの部位「ボンショー・ヘッドバラ」

ナカバラの中でも、「三角バラ」にそのまま続く部位で、ボンレスショートリブが短くなって「ボンショー」と呼ばれるようになりました。
三角バラの特上カルビ部位「ヘッドバラ」の続きなので、そのまま「ヘッドバラ」と呼ぶこともあります。
ナカバラの一番端に指8本分ほどしかとない希少部位です。
※なぜ8本分かというと、通常柵取りする際に指4本分の幅でカットするためです。

通常、カルビ肉の並・上・特上といった定義に明確な指標はなく、お肉屋さんやレストランが独自に決めているのですが、この「ボンショー」は見ただけでこれは特上カルビにしようと満場一致で決まること間違いなしです。

和牛 ボンショー

 

この写真は2種類の肉質がくっついていますが、どちらがボンショーかすぐに分かるほど肉質が違いますね。
(右側がボンショーですね!)

切り分けて柵取りすると、このような形になります。

特上カルビ

 

味に関しても、もはや何も語ることがありません!
この部位を特上カルビとして提供すれば、誰が食べてもこれは特上カルビ!と納得してもらえます。

 

ボンショーの美味しい食べ方

焼肉にして、サッと炙るだけにして食べるのが一番いいです。
タレでも塩でもわさび醤油でも、どうやって食べても美味しいですね。
ただ本当に美味しい食べ方は、薄く切っての刺身が最高なんです。
厚さ1ミリに薄く切ってわさび醤油で食べたり、半解凍にしたボンショーを薄く細かく切ってご飯の上に乗せ、牛トロ丼として食べるともう言葉にならないくらい美味しいです!
本当は当店でもこの生食を提供したいのですが、生食販売の規格基準が色々と複雑なため残念ながら販売することが出来ません。
もしお肉屋さんで生食用の特上カルビを見かけたら是非トライしてみてください。

 

知ってる人は焼肉通「ササミ・ササバラ・フランク」

ササミと言ったら鶏のササミを連想することと思いますが、肉質は全然違います。
ソトバラの中でモモの付け根にほど近い場所にある希少部位で、牛一頭から2.5kgほどしか取れません。
脂を落として成形すると、表面に笹の葉のような繊維が入っていることからササミ・ササバラなどと呼ばれています。
英語ではFlankと呼ばれ、日本でもフランクと呼ぶ方もいます。

和牛 ササミ 塊

 

真ん中で割ると中心に白いスジが通っているように見えますが、スジっぽさは全くありません。

和牛 ササミ 塊

サシも細かく入っており脂っぽいのかと思いきや、その見た目とは裏腹にとてもサッパリしています。
クセもなく柔らかくあっさりとしていて、たくさん食べても胃もたれしません。
カイノミと違って、ササミとしてメニューに載っているお店は少なく、大抵は上カルビの中に入ってしまっていることと思います。
当店の希少部位ササミ焼肉用、この機会に是非いかがでしょうか?

 

ササミの美味しい食べ方

基本的には焼肉一択となります。
もっと分厚ければステーキで食べても美味しいと思うのですが、細長くなってしまうのでステーキらしい形にカットが出来ません。
焼き加減はレアにし、にんにく醤油、わさび醤油が合います。
カイノミ同様、焼き過ぎると固くパサパサになるので注意しましょう。

 

 

ハラミに似た食感の希少部位「ウチハラミ・インサイドスカート」

ウチハラミという名称からも分かるように、内蔵系人気部位のハラミの親戚のような関係性のお肉です。
ソトバラ・ウチバラにまたがってとても細長く付いている腹横筋で、横隔膜であるハラミ近くにあります。
細長いものの非常に薄く、一頭から2kg程度しか取れない希少部位です。
ハラミが英語でアウトサイドスカートと言うのに対し、ウチハラミはインサイドスカートと言います。
この英語名称を短くして、「インサイド」という呼び名もよく使われます。
インサイドと言いつつ、ハラミよりウチハラミの方が外側にあります。
形状も食感もハラミそっくりで、とても繊維質です。
味はハラミとカルビの中間のような味と言えばいいのでしょうか、見た目はササミ同様にあっさりしていそうに見えますが、実際はこってりとした味わいです。
こちらもあまりウチハラミとしてメニューに載っていることは少ないです。
どちらかというと並カルビか上カルビに混ぜたり、店によってはハラミとして提供することもあるのではないでしょうか。
当店の希少部位ウチハラミ焼肉用、この機会に是非ご賞味ください。

 

ウチハラミの美味しい食べ方

ウチハラミも食べ方は焼肉一択でしょう。
とてもコクがあるので、素材を活かして塩胡椒にするか、ハラミのようにタレで食べるかといったところです。
わさび醤油も中々合います。
肉が薄いので焼き加減はこちらもレアもしくは表面を炙る程度にしましょう。

 

脂たっぷりの超こってり部位「タテバラ」

ソトバラの中で前脚側にある部位で、その特徴はとてつもないサシの量です。
他の部位は赤身の中に白いサシが点々と入っていますが、タテバラはその逆で、白い脂肪の中に赤身が点々と入っているような見た目です。

仙台牛 タテバラ

 

断面を見ても分かる通り、表面の脂を落としても依然として脂たっぷりです。
焼肉用にスライスした場合、A5等級だと脂肪と赤身の割合は脂肪6に対して赤身4程度の割合になったりします。
また表面に1本、太い血管が埋まっており、加工する際に取り外す必要があります。
脂たっぷりで、カルビの中でも一番こってりとしているため、霜降り大好きな方にはたまらない部位と言えるでしょう!
逆に赤身好きな方は、カロリーも高く脂っこいため食べられないかもしれません。
焼肉店では並か上カルビに混ざっていたりします。
中にはこれを特上カルビと謳っているお店もありますが、個人的にはサシが多いから特上というのは疑問で、味や見た目のキメ細やかさなども重要だと思っています。

タテバラがあればヨコバラという部位もあり、この2つは隣り合って交差しています。
隣り合っていますが肉質は全く違い、ヨコバラにはそこまでサシが多くありません。
当店ではタテバラはトロカルビという名称で販売しており、ヨコバラは通常のカルビ材として使用しています。

 

タテバラの美味しい食べ方

タテバラもやはり焼肉一択です。
脂が多いので薄切りも厚切りも合いません。
食べる際にはいかに脂を落とすかが重要になります。
バベキューで豪快に焼くのに向いているのですが、ご家庭のフライパンなどだと脂が逃げないのであまりお勧め出来ません。
ご家庭ですと溶岩プレートなどを使うといいかもしれません。
※個人的に溶岩プレート焼肉は、程よく脂が落ちてA5和牛の焼肉にはお勧めです。

焼き加減はミディアムがいいでしょう。
多少強めに焼いて脂を落とすと、肉の旨味だけが口の中に残ります。
甘口のタレで食べるのも合いますが、個人的には醤油やポン酢でさっぱり食べるのが好きです。

 

焼肉で人気の中落ちカルビと言えば「ゲタ・バラ山」

肋骨と肋骨の間にある部位で、タテバラほどではないですが、かなり脂の量が多く、中落ちカルビとして提供される部位です。
ナカバラ側は細長く、ソトバラ側は太く短いのが特徴で、バラの上にあるリブロース側にもゲタは付いています。
名称上はトモバラがただのゲタであるのに対し、リブロース側はリブゲタと呼ばれています。(わざわざ区別しない場合もありますが。)
柵取りするにも脂が複雑に絡み合っているため、細めのゲタだと立方体でぶつ切りにしたりもします。
骨周りの肉なので、味や風味は濃厚でこってりしており、残念ながらカロリーは非常に高いです。
成形する際はホネハダと呼ばれる硬いスジが残っている可能性があるので、筋引きした後で注意深くチェックする必要があります。

 

中落カルビ「ゲタ・バラ山の美味しい食べ方

分厚く切ってサイコロステーキや中落ちカルビにするのが一般的です。
ある程度太いゲタの場合には、柵取りして一般的なカルビのようにスライスすることも可能ですね。
かなりこってりしていますので、ミディアムからウェル程度まで焼いて脂を落とした方がいいと思います。
甘口のタレで食べるのがお勧めです。

 

滅多に売っていないレア商品「カッパ・フランケン」

使い勝手に困るため、そのまま捨ててしまうこともある部位がカッパです。
部位の小割りの説明の時に薄い肉と書きましたが、正確には薄いスジと言ってしまった方がいいかもしれません。
ちなみにカッパは頭にお皿のある妖怪の方ではなくて、雨合羽の方のカッパです。
丁度枝肉がレインコートを着てるように見えたのでカッパと名付けられたそうです。

スジの裏表にしっかり脂が付いているため、焼肉用で販売するならこれを全て取り除き、スジ切りをして食べやすくしてあげる必要があります。
そうやって頑張って下処理しても結局はスジなので、労力に見合わずそのまま捨てるお店が多いと思われます。
やるとしても一部分厚くなっているところだけを極薄で切って焼肉用にし、残りは全て脂を付けたまま煮込み用にするのがいいでしょうか。

 

カッパ・フランケンの美味しい食べ方

きちんと脂を取って薄切りにして焼肉にすると、中々濃厚で肉らしさを味わえます。
かなり味が濃い部類で、ネックなどに近いと言えるのではないでしょうか。
なお一度面倒になって脂を落とさずにそのままぶつ切りにしてから隠し包丁を細かく入れて焼肉として食べてみましたが、A5でもかなり硬く、一部は噛み切れずに飲み込むことになりました。
恐らくスジなのでA5等級だから柔らかいなどということはなく、どの牛でも同じくらいの固さなのでしょう。

なので、個人的には煮込みがお勧めです。
ネックやスネ同様に、硬い肉は濃厚な旨味を備えていることが多く、カッパも煮込んで柔らかくするととても美味しくなります。
牛スジ煮込みなどにしてもいいですね。
コラーゲン豊富で美味しい煮込み料理になるでしょう。

 

カルビ材が盛り沢山「ショートプレート、カブリ、ヨコバラ」

さて多くの希少部位を分けた後で最後に残るのが、当店ではカルビ材として使っている「プレート」「カブリ」「ヨコバラ」になります。

仙台牛 バラプレート

 

この中で「ヨコバラ」は「タテバラ」の項目で少し書きましたが、タテバラとは直角に繊維が入った隣り合った部位で、赤身と脂のバランスが良い部位です。
カブリは若干薄めかつ硬い肉質で、ナカバラとソトバラ両方から取れますが、ナカバラの方がより大きいです。
プレートはナカバラの残った肉のことを呼びます。
特にそれぞれを分けてまで特徴のある部位ではないため、全てまとめてカルビ材として使用しています。

 

ショートプレート、カブリ、ヨコバラの美味しい食べ方

この部分は基本的に並カルビ材、少しサシが綺麗なところは上カルビ材として使用することもあり、焼肉で食べるのが一般的です。
バラしゃぶの場合、肩バラの「ブリスケ」という上下を脂に挟まれた部位を使うことが一般的ですが、このプレートを薄く切っても食べることは可能です。
ただし、肉がそこまで厚くないのと他に薄切りで美味しい部位はたくさんあるので、個人的には焼肉で食べるのがお勧めの部位となります。
カルビ焼肉ですので、焼き加減はお好みで、味付けもタレ・塩・醤油なんでも合わせることが出来ます。

 

和桜通商で販売している希少部位

通常お肉屋さんが「ばら肉」を販売する際に、全部位を分けてから希少部位ごとに販売することは多くありません。
インサイドやササミといった部位の知名度が高くないこと、商品数が多いと在庫管理が大変なうえ、量があまり取れないため安定供給出来ないこと等が原因かと思います。
そのため高級なカイノミは別にして、後は全部混ぜてカルビ材にし、見た目のサシの量等で並、上、特上と分けることが一般的です。

和桜通商は店主がお肉大好きということもあり、それぞれの部位ごとの味の違いを知ってもらいたいとの観点から、出来る限り各部位を単体で販売することにしました。
和桜を見れば、何か珍しいものがあるに違いないという、わくわく感を感じさせるような商品ラインナップを考えて店舗運営をしております。
バラ肉の希少部位であるカイノミ、ササミ、インサイドをはじめ、何でも取り揃えていますし、今後の商品展開もご期待ください!

 

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