牛肉・黒毛和牛の「モモ肉」ウチモモ・ソトモモとは? 人気の赤身肉モモの希少部位や、おいしく食べる方法を徹底解説

淡路和牛_内もも_塊

牛肉の「モモ肉」と聞くと、ほとんどの方は人間でいう太ももの肉のことだと思うのではないでしょうか?
今回解説するウチモモ・ソトモモはまさにその部分のことで間違いありません。
赤身肉として有名で、よくスーパーにもモモ肉スライスとして並んでいますね。
ウチモモ・ソトモモの解説は全部位紹介記事で記載していますので、ここでは主に小割りできる希少部位についてご紹介していきたいと思います。

牛肉・黒毛和牛「ウチモモ・ソトモモ」とはどこの部位?

 

この図だと分かりづらいのですが、ウチモモがふくらはぎ、ソトモモがその反対側で、2つ合わせて太ももになると考えると分かりやすいかと思います。
関西ではウチヒラ・ソトヒラと呼ばれています。
英語だとRoundですね。
ウチモモ・ソトモモを合わせると約20g程度の重量になります。

 

モモ肉はウチモモ・ソトモモだけじゃない?

さて一般的に思い浮かべるモモ肉の部位は今回ご紹介している「ウチモモ・ソトモモ」なのですが、実はモモ肉と呼ばれる部位はここだけではありません。
国が定める食肉小売品質基準では、図の中の「シンタマ」という部位はウチモモの一部に位置付けられ、ランプとイチボを合わせた「ランイチ」という部位もモモ肉に含まれます。
つまり、太ももだけではなく、お尻や股関節の部分もモモ肉に含まれることになります。

モモ肉は赤身肉としてメジャーな部位ですが、単にモモ肉スライスと書かれている場合、そのお肉はウチモモかもしれないし、ランプかもしれないわけです。
頻繁にモモ肉のスライスを買って食べている人は、同じグレードの肉なのに何故かいつも固さや味が違うと思ったりしませんか?
その原因がここにあります。

一言でモモ肉といってもランプとウチモモでは味やサシ加減、肉質が全く違いますからね。
とはいえランプは最近ステーキで人気の部位なのでランプをモモ肉スライスとして売っているお店はそうそうないとは思いますが。
ウチモモとソトモモだけでも肉質は若干異なり、どちらもよくスライスに使われるので、一般的に思い浮かべる差はこの2つの差のことでしょう。

 

「ウチモモ・ソトモモ」から小割りできる部位

それではまずウチモモを小割りしていきましょう。
ウチモモの表面にウチモモカブリという薄い肉がついています。
これを取り外すと、ブロックの先端に小モモと呼ばれる希少部位が取れます。
後の肉は全て大モモと呼ばれますが、あまりに大きいのでそのままウチモモと呼ぶことも多いです。

次にソトモモを小割りします。
まずはソトモモのスネ側についているハバキという希少部位を取り外します。
このハバキの中には更に希少なセンボン・千本筋という超希少部位が眠っています。
次に側面にシキンボウという赤身ブロックがあり、それを取り外した残りをナカニクと呼びます。

それでは、それぞれの部位をご紹介していきます。

 

噛み応えがたまらない赤身肉「ウチモモカブリ」

ここまで当店の他の部位記事を読まれてきた方ならお馴染みの「カブリ」部位最後の一つです。
「肩ロース」「リブロース」「トモバラ」といった部位にて見られた、メインとなる肉の上に張り付いている若干硬いお肉です。
このウチモモカブリはオオモモの上に張り付いていて、他のカブリより薄いのが特徴です。
またウチモモ自体が固い肉質の赤身なので、ウチモモカブリはほかの部位のカブリよりもさらに固いです。
取れる量は他のカブリより少なく貴重です。

 

ウチモモカブリのおいしい食べ方

牛肉の中でも脂肪分がとても少ない部位ですので、カロリーが少なくヘルシーです。
若干繊維質が強いものの、赤身肉としての味わいは強いです。
オオモモに比べ固いので、通常は薄く切り落としにしたり煮込み用に使います。
本来はわざわざ小分けせずに1.5ミリほどの薄切りにしてモモ肉スライスに混ぜてしまうのが王道なのですが、当店では折角の高等級和牛ですので焼肉用に少し厚くカットしています。
噛み締めると肉の旨味があふれ、程よい歯応えと相まって肉を食べてるという実感が沸き上がってきます。
焼肉ではミディアムレアで焼いて、甘口タレで食べるのがオススメです。

 

サシのない希少な赤身肉 小モモ

淡路和牛_コモモ

ウチモモの先端から少しだけ小分けできる希少部位です。
一頭から1kg程度しかとることが出来ず、オオモモから筋に沿って切ることで小モモを分けることが出来ます。
キメは粗く筋も多いですが柔らかい部位です。
写真で見ても分かるようにほとんどサシがありません。
大モモに比べても更にサシが少ないのですが、それでも柔らかいのが小モモです。
鉄分豊富で強い味わいが特徴です。

小モモのおいしい食べ方

煮込んでも美味しいですが、折角の柔らかい部位なので焼肉で食べることをお勧めします。
焼き加減はミディアムにして、塩や醤油のみで強い味わいを堪能するのがいいでしょう。

 

 

ウチモモの主要部位 大モモ

ウチモモからカブリと小モモを外した残り全てがこの大モモです。
わざわざ名称を大モモに変えず、これ自体をウチモモと呼ぶことも多いくらいです。
そもそもが普通のお店では小モモやカブリをわざわざ外さないで加工する方が一般的ではないでしょうか。
5kg以上の大型ブロックのため、ここから更に2,3分割してからスライスすることも多いです。
その場合、中心部分はローストビーフなどに向いていますね。

前足にあたる肩(ウデ)部位同様に、こちらも非常に筋肉質な部位になります。
サシも少なく、赤身肉として流通しています。
ソトモモと比べるとウチモモの方が柔らかいため、上赤身しゃぶしゃぶスライスなどにはウチモモのスライスが使われていることが多いです。
外国産だと固いうえに筋もとても気になりますが、高等級の和牛であればそんなことはありません。

大モモの美味しい食べ方

当店では大きな塊を丸ごとスライサーで1.5mmに薄切りしています。
写真の通り、1枚がかなりの大判となりますので、色々な料理に使えるかと思います。

淡路和牛_ウチモモ

 

まずはそのまましゃぶしゃぶやすき焼きで食べてみてください。
茹ですぎると固くなりますので、お湯に潜らせてから1,2回湯がく程度で十分です。
赤身肉の美味しさを味わえるでしょう。
折角一枚が大きいので、それを活かした肉巻き系料理とかにも使えますね。

 

赤身が素晴らしいローストビーフのお勧め部位 シキンボウ

 

淡路和牛_シキンボウ

ソトモモの中で内側についている部位で、形が金の延べ棒に似ていることから名付けられました。
円柱状に形が整っており、成形せずにそのままスライスして使える特徴のある形をしている希少部位です。
関西ではマクラとも呼ばれますが、肩ロース隣接の肩(ウデ)部位「ニノウデ」も「マクラ」と呼ばれるのでややこしいですね。
見るからに真っ赤でサシがほぼなく、キメが荒くて煮込みに向いています。
繊維質が強く弾力のある歯応えが特徴で、肉質は意外と柔らかいです。
よく他のサイトで固いため厚切りには向いていないと書いていることが多いですが、自分でA4和牛のシキンボウを1cmくらい厚切りにして焼いて食べてみた時はもっちりしていて美味しかったです。
たまたまなのか、A4だったので柔らかかったのかは不明ですが。
赤身が好きな人は味わい深くて美味しいと感じると思います。

シキンボウの美味しい食べ方

薄くスライスして食べるのもいいですが、この形、何かにとても向いているようにみえませんか?
そう、ローストビーフです。
場所による凹凸もなく、金太郎飴のように一定の太さなので、まさにローストビーフにおあつらえ向きな形に見えますよね。
当店では、この部位は3分割して、500g前後のローストビーフ用ブロックとして販売しています。
ローストビーフにすると、元々の弾力のある肉質が柔らかくなり肉の甘さが際立ちます。
もちろん普通の煮込みにも使えますが、折角ですから下記記事を見ながら調理にトライしてみてください。

 

ちなみに、ローストビーフに使ってお勧めの部位は基本全部モモ肉の部位です。
店主的にはランプとシンシンがTOP2かなと言った印象ですね。
ただどちらも和牛だと値段が張るので、入門編としてシキンボウはかなりお勧めしています。
あとモモ以外ですと肩部位の希少部位トウガラシも悪くありません。

 

コラーゲン豊富なハバキ

1頭から約3kg程度しか取れない希少部位で、ソトモモの中でも人間でいうヒラメ筋にあたる部位です。
最大の特徴は、このハバキの奥に超希少部位の千本筋が眠っていることです。
中に筋が多く入っていてサシも少ないのですが、意外と食感は柔らかく味も濃いです。
焼肉の場合ある程度筋を取り除いたり筋切りするなどして下ごしらえする必要があるので、煮込み用で販売することの方が多いですね。

ハバキの美味しい食べ方

ゼラチン質豊富で煮込みと味わい深い部位です。
薄く切れば焼肉でも十分楽しめます。
当店では千本筋を取り出したハバキをブロック販売しています。
筋引きもしていないので、そのまま煮込むか、薄く切るなら表面についている筋を少し落としてから食べてみてください。

 

知る人ぞ知る超希少部位の一つ 千本筋・センボン

希少部位ハバキの奥に、お宝のように包まれた知る人ぞ知る希少部位がこの千本筋です。
その名の通り、千本も筋があるのではというところから命名されました。
実際にはそんなにはないのでしょうけど。ちなみにハリセンボンも実際には500本くらいしか針はないそうです。
牛肉の部位は数あれど、全部位の中でも随一の独特の形状と食感をしており、味もとても濃厚です。
周りはゼラチン質に囲まれ、中にたくさん通っている筋がコリコリとした食感を導き出します。
コラーゲン豊富で煮込んでも良し、薄く切って焼肉にしても良しですね。
牛1頭から500g程度、たった2本しか取れない大変貴重な商品です。

千本筋のおいしい食べ方

煮込むと溶けだしたコラーゲンと筋の食感が合わさり、何とも言えない美味しい食感をもたらします。
しかし折角の和牛の千本筋なので、煮込むより焼肉で食べる方がお勧めです。
5ミリ程度の厚みに切って、ミディアムに火を通し、醬油やタレで食べてみてください。
どちらかというとホルモン系に近いような食感が味わえると思います。

 

ソトモモの主要部位 ナカニク

ウチモモの大モモと対をなすのがこのナカニクです。
ソトモモからシキンボウとハバキという希少部位を取った残りをナカニクと呼びます。
塊状だと大モモ同様に5kg以上ある大型部位です。
中心に一本筋があるので、お店によってはそこで2分割することもあります。

モモ肉4種の中では一番筋肉を動かすところなので、固い肉質と濃厚な赤身の旨味、若干の甘味が特徴です。
固い赤身肉ではありますが、実物を見てみると、意外とサシが入っていることが分かります。
薄く切ると固さが薄れ、極上の赤身しゃぶしゃぶ肉に早変わりです!
値段も安いので普段使いのお肉としても最適ですし、何よりサシが少なくてサッパリしているので飽きが来ません。

なお脂が少なく水分が多いという部位の特性上、変色がしやすく、特にふちの部分がすぐに黒ずんでしまいます。
モモ肉は高等級和牛でも黒く変色しやすいため、腐ってるのでは?などと不安に思わずに美味しく召し上がってみてください。

ナカニクの美味しい食べ方

前述の通り、スライス以外にすることはほとんどないので、しゃぶしゃぶやすき焼きで食べるのが大半です。
後はブロックカットして煮込み系に使ったり、端材をミンチにしたりもします。
スーパーで売られているモモ肉スライスは大抵この部位が使われていますね。
歩留まりがよく、値段も安く、固いのでスライスしたあとで形を整えやすいからでしょう。

 

終わりに

ウチモモとソトモモ、モモ肉といってもただの赤身肉ではないということが分かりましたでしょうか。
赤身肉としては、肩(ウデ)と双璧をなす人気部位モモ。
今度モモ肉スライスを食べる際には、どこのモモ肉なのか考えながら食べて見ると、いつもと違った味わいを楽しめるかもしれません。
また、非常にマイナーな希少部位センボン。
モモ肉からこのような希少部位が取れるということを知っている方は本当に少ないです。
機会があればぜひ食べて見てください。

 

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