あか牛|豊富なうまみとほどよい脂肪のレアな和牛

うまみいっぱいの赤身と控えめな脂肪のバランスが美味しいあか牛。この記事では、あか牛の歴史や特徴、あか牛の二大系統「熊本系」と「高知系」、そしてあか牛の美味しさの特徴と美味しい食べ方などをご紹介します。

 

あか牛とは

あか牛は「褐毛和種(あかげわしゅ)」と呼ばれる、明るい茶色の和牛です。
和牛には褐毛和種のほかに、黒毛和種、無角和種、そして日本短角種という品種があります。
日本で流通している和牛のほとんどは黒毛和種ですので、褐毛和種である「あか牛」はとてもレアな和牛なのです。

 

あか牛

 

あか牛の歴史

あか牛の歴史はとても古く、日本神話に登場する健盤龍命(たけいわたつのみこと)が、阿蘇を開拓して農業を始めた頃から飼われていたと伝えられています。
現在のあか牛は、朝鮮半島から役用として輸入され、豊後(ぶんご・現在の大分県と宮崎県の一部)に多くみられた韓牛が起源とされています。
あか牛は、明治時代後半からシンメンタール種などの外来種との交配によって改良されてきました。

 

あか牛の特徴

あか牛は、おとなしい性格に加えて、粗食に耐え、寒さ暑さに強いので飼育しやすく、放牧にも向いています。
また、あか牛は黒毛和種にくらべるとやや大きな体格です。その肉質は赤身が多くて柔らかく、脂肪分がほどよいのも特徴です。
あか牛の脂肪の色は、黒毛和種と比べると黄色がかっていることがあります。
これはあか牛が自然の中でたくさん日光浴をしたり、ビタミン豊富な牧草を食べたことによるものです。

 

あか牛の二大系統・熊本系と高知系

あか牛は熊本と高知で繁殖されてきた背景から、「熊本系」と「高知系」という代表的なふたつの系統があります。

 

熊本系「くまもとあか牛」

「熊本系」は「くまもとあか牛」と呼ばれ、熊本県・阿蘇地方を中心に、温泉や水源のある自然豊かな地域で育てられています。
特に、阿蘇地域のカルデラと外輪山に広がる広大な草原でゆったりと過ごす「くまもとあか牛」の姿は、阿蘇のシンボルになっています。
「熊本系」は熊本県のほかに長崎県や北海道でも育てられています。

 

高知系「土佐あかうし」

「高知系」は高知県内でしか改良されていない褐毛和種です。
高知県で生まれ育った土佐褐毛牛は、土佐和牛「土佐あかうし」と呼ばれています。
「土佐あかうし」は高知県内でしか生産されていないので、年間出荷量は和牛生産量の0.1%にしか満たないというとてもレアな牛です。

熊本系と高知系のどちらも、黒毛和牛と比べると生産頭数が圧倒的に少ないので手に入りにくい反面、
血統をしっかり管理できたり、一頭一頭に目の届く飼育ができるのが利点となっています。

 

くまもとあか牛と土佐あかうしの違い

くまもとあか牛と土佐あかうしは毛色に違いがあります。
くまもとあか牛の毛色は黄色がかった褐色で、体の下部や足の内側、そして眼や鼻の周辺が淡い色をしています。
一方、土佐あかうしは、褐色の被毛に、目の周囲やまつげ、そして尻尾の先などが黒いのが特徴です。
そのような土佐あかうしは「毛分(けわけ)牛」と呼ばれて人気があります。

くまもとあか牛と土佐あかうしの毛色がこのように違うのは、それぞれの改良過程が異なるからです。
どちらも明治時代にシンメンタール種などの外来種との交配によって改良されたところまでは同じなのですが、
くまもとあか牛は、シンメンタール種のほかにも、デボン種やブラウンスイス種などの外国種との交雑によってさらに改良されてきました。
それに対して、土佐あかうしは、大正時代からは高知県内の土佐あか牛だけの中から優秀な牛を選んで交雑する「閉鎖育種」と呼ばれる方法で改良がすすめられてきた経緯があります。

 

漢方和牛

熊本系と高知系以外にも、「漢方和牛」と呼ばれるあか牛もいます。
漢方和牛は、えごまや桑の葉などの漢方草を混ぜた餌を与えられたあか牛です。
漢方和牛の最大の特徴は、融点の低い上質な脂肪です。
融点が22度前後と人の体温よりも圧倒的に低いので、口の中でさらりととけてジューシーな味わいが楽しめます。
脂肪がとけやすく食べた後体内に残りにくいのも特徴です。
また、悪玉コレステロールを下げるオレイン酸を黒毛和牛よりも多く含んでいるといわれています。
そして、漢方和牛にはアミノ酸が黒毛和牛の1.5倍以上含まれています。
中でもグルタミン酸は黒毛和牛の約2倍以上。
グルタミン酸は昆布に含まれるうまみ成分として知られていますが、脳を活性化させたり、ストレスへの抵抗力を強化する働きもあります。
そのほかにも、内蔵脂肪の蓄積を押さえるスレオニンや、体内の脂肪を燃焼させるアラニンも黒毛和牛より多く含まれているといわれています。

 

あか牛のおいしさの特徴と美味しい食べ方

あか牛のおいしさは、甘やかな赤身のうまみとほどよい脂肪のバランスの良さが特徴です。
あか牛のサシはきめ細かく、融点が低いので、切れの良いあか牛独特の風味を楽しめます。
そして、あか牛の赤身には豊富なうまみ成分が含まれています。
特に、土佐あかうしの赤身は、月齢28ヶ月ほどまでしっかりと肥育されることで、グルタミン酸やアラニンなどのうまみや甘味を感じさせるアミノ酸を豊富に含む美味しい肉になります。
これらのアミノ酸を熟成させると、うまみや甘味がより一層増加します。特に甘味を感じさせるアミノ酸は黒毛和牛の2倍以上含まれていて、熟成により4倍にも増加するといわれています。
機会があればぜひ一度あか牛の熟成肉を食べてみたいですね!

 

あか牛はからだに優しい

あか牛は黒毛和牛に比べて脂肪が少なめなので、健康のために脂肪の摂取量を控えたい方に嬉しい牛肉です。
また、あか牛の肉の赤身には「タウリン」が多く含まれていることがわかっています。
この「タウリン」には、心臓や肝臓の機能を高めたり、視力回復や高血圧の予防、そして胆汁酸と結びつくことでコレステロールを消費してコレステロールを減らすなどの効果があるといわれています。

 

あか牛の美味しい食べ方

あか牛のほどよいジューシーさと豊富なうまみを同時に楽しむ料理のおすすめは、焼肉やステーキです。
シンプルな味付けにするとお肉のうまみが引き立ちます。
一方、モモ肉の表面を軽く焼いたタタキにすると、あか牛特有の甘味とうまみを堪能できます。
また、モモ肉のローストビーフも赤身のうまみをじっくり味わえる食べ方です。
そして、あか牛のお肉は、ほどよい脂のおかげで煮込んでもぱさつきにくいので、カレーやビーフシチューなどの煮込み料理も美味しく仕上がります。
さらに、脂が良質で冷えてもべとつきませんので、牛丼やしぐれ煮など和の食材としても活躍します。

 

あか牛はお財布にも優しい

うまみ成分豊富でしみじみと美味しいあか牛のお肉。
わたしたち和牛グルメファンにとって嬉しいのは、黒毛和牛に比べるとあか牛は比較的お手頃なお値段で手に入ることです。
その理由は、日本の和牛マーケットにあります。
日本では霜降り肉の人気が高く、A5などの細かいサシがぎっしり入ったお肉が最上級とされる傾向にあります。
一方、あか牛は黒毛和牛に比べると脂肪が少な目ですので、サシは入っていますがどちらかといえば控えめです。
そのため、赤身の美味しさでは黒毛和牛にひけを取らないあか牛なのですが、お値段に関しては、霜降りが入りやすい黒毛和牛よりお安いことが多いのです。
このように、あか牛は美味しいだけでなく、お財布にも優しいお肉なのは嬉しいですね!

 

おわりに

「脂肪はちょっと控えたいけど、うまみのある美味しいお肉を食べたい!」
こんな健康意識の高い和牛グルメファンのみなさんに、ぜひ食べていただきたいお肉があか牛です。
黒毛和牛と比べると圧倒的にレアな牛ですが、もし店先やインターネット通販サイトであか牛を見つけたら、ぜひ一度お試しになってみてはいかがでしょうか。

 

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