ドライエイジングビーフ|美味しい食べ方とドライエイジングビーフのステーキの焼き方
ドライエイジングビーフとは乾燥熟成させた牛肉です。
肉を乾燥熟成させると、たんぱく質が分解されてアミノ酸が増えるほか、酵素や微生物による分解でうまみが増し、肉質も柔らかくなります。
乾燥熟成はアメリカで人気のある熟成方法で、近年日本でも取り入れられるようになりました。
ここでは、ドライエイジングビーフの特徴や熟成方法、そして美味しい食べ方とドライエイジングビーフのステーキの焼き方などをご紹介します。
目次
ドライエイジングとは
ドライエイジングとは、肉などを乾燥させつつ熟成させることです。
牛肉をドライエイジングで熟成させる場合、枝肉(えだにく)や肉の塊を空気にさらし、肉を酸素に触れさせることで、肉の中の天然酵素が活性化します。
活性化した天然酵素は、肉の分子結合を分解するので、その結果、肉の風味や食感がドライエイジングビーフ独特のものに変わるのです。
ドライエイジングでよくみられる光景は、熟成庫または熟成室いっぱいのカビだらけの枝肉です。
ドライエイジングで熟成させるとき、枝肉は温度と湿度を管理できる乾燥熟成庫または熟成室内に吊り下げられ、肉全体に常に空気が流れるように調整されます。
熟成庫内の温度はおよそ0~4℃。高すぎると肉が腐ってしまいますし、逆に低すぎると凍ってしまうので熟成が進みません。
温度のほかに湿度もドライエイジングの重要なポイントです。
肉のまわりに常に空気の流れを作る理由は、肉を酸素に触れさせて熟成を進めるためだけではありません。
熟成が進み肉が分解されると水分が出るので、その水分を蒸発させて、肉が腐らないようにするためでもあるのです。
熟成が進むにつれ、肉の表面は赤黒い色に変わり、表面にはカビが生えます。
このカビは有毒なものではなく、ブルーチーズに生えるような良い種類のカビです。
このカビが持つリパーゼという酵素が脂肪を分解すると、ドライエイジングビーフの独特の香り、熟成香が生まれます。
この熟成香は、ナッツやバターをかけたポップコーンのような香りなどとといわれます。
熟成が終わるとカビはすべて削り取られ、柔らかくなった美味しい肉が残ります。
ドライエイジングで熟成すると牛肉はどうなるの?
ドライエイジングで牛肉にどんな変化が起きるのかご紹介します。
見た目の変化
ドライエイジングで熟成が進むと、まず、肉の色が鮮やかな色から赤黒い暗い色に変わっていきます。これは肉の表面から水分が失われるためで、ビーフジャーキーが暗い色をしているのと同じ原理です。
そして、赤身の部分は水分が蒸発するので縮んでいきますが、脂肪の部分は縮まないので、塊肉の断面は赤身の肉の部分がへこんだように見えます。
風味の変化
ドライエイジングで熟成すると、肉の水分が蒸発し、肉に残された成分が濃縮されるので、結果として濃く深みのある味わいが生まれ、香りも増します。
水分だけでなく科学的な反応も風味に影響しています。
肉の中の酵素や微生物に分解されたタンパク質は、ペプチドやアミノ酸に変わり、肉のうま味を引き上げます。
そして、グリコーゲンは分解されて糖分になるので、甘みのある肉になります。
食感の変化
ドライエイジングでタンパク質が分解されると、噛み切りにくいような硬い部位の肉も柔らかくなります。
ドライエイジングビーフの熟成期間はどれくらい?
ドライエイジングビーフは15~30日くらい熟成させるのが一般的です。
中には60日から90日間も熟成するものもあります。
そのような長期間熟成されたドライエイジングビーフには、ブルーチーズのような独特の風味が生まれます。
ベストな熟成日数は、熟成が長くなるほど独特の匂いが強くなるので、個人の好みによります。
普段クセのある風味の食べ物が苦手な方がドライエイジングビーフに初めて挑戦するときは、熟成30日以内のお肉から試してみるのがいいかもしれませんね。
ドライエイジングに適した部位は?
骨付きのリブロースやサーロインがドライエイジングに適しているといわれています。
なぜなら、ドライエイジングビーフは熟成させた後に表面を削り取るので、骨や脂肪で覆われた部位なら削り取る部分が少なくなり、味わえる部分が多くなるからです。
どうしてドライエイジングビーフは高価なの?
ドライエイジングビーフのお値段が高めなのは、熟成までにコストがかかるからです。
水分が蒸発するので重さが減るのに加えて、カビの生えた表面を削りとるので、実際に売れる部分は仕入れた肉の半分以下になることもあります。
さらに、長期間熟成させるため、その間のキャッシュフローが滞るのと、熟成させる設備が必要なのでランニングコストがかかります。
その結果、ドライエイジングビーフは高めのお値段で取引される傾向があります。
ドライエイジングとウェットエイジングの違い
ドライエイジングに対してウェットエイジングという熟成方法もあります。
ウェットエイジングは、お肉を真空パック(バキュームパック)にして熟成させる方法です。この方法はバキュームエイジングとも呼ばれます。
ウェットエイジングは真空パックの中で熟成されるので、水分の蒸発が一切ありません。
それに、ドライエイジングビーフのように外側の肉を削り取る必要もないので、ウェットエイジングは肉を扱う業者にとってはロスがなく、ドライエイジングと比べて手間も少ない熟成方法です。
その一方、ウェットエイジングでは水分の蒸発がないので、ドライエイジングビーフのように肉のうまみが凝縮することはなく、熟成香もありません。
ドライエイジングビーフの美味しい食べ方と焼くときの注意点
ドライエイジングビーフの熟成した肉のうまみと熟成香を楽しむなら、ステーキか焼肉で、なるべく厚めのカットがおすすめです。
そして、ドライエイジングビーフを調理するときは、新鮮な牛肉と違う点があるので注意が必要です。
ドライエイジングビーフは、乾燥熟成の過程でかなりの水分が蒸発しているので、同じ大きさの新鮮な牛肉と比べると火が早く通ります。
ですので、ドライエイジングビーフを焼くときは、表面に焼き色がついたら、後は弱火で火が通りすぎないように気を付けて焼きます。
新鮮な牛肉を焼くときより早めにフライパンから取り出し、レアかミディアムレアくらいに仕上げるのがおすすめです。
また、水分が少ないので、ステーキをカットしたときに出てくる肉汁も、同じ焼き加減の新鮮な牛肉のステーキより少な目です。
そして、炭火など肉に強い香りのつく焼き方よりは、フライパンで焼くほうが、ドライエイジングビーフの熟成香を楽しめます。
ドライエイジングビーフのステーキの焼き方
1.ドライエイジングビーフのステーキを、焼く1時間前に冷蔵庫から取り出し、室温に戻しておきます。冷たいままのステーキを焼くと、表面に露がついた状態になり、焼き色がつきにくくなるので、必ず室温に戻します。
2.焼く直前にステーキに塩をふります。塩を早めにふるとステーキから水分が出てしまい上手く焼けません。ステーキから出た水分で表面が濡れた状態だと、焼き色をつけて肉汁を肉の中に閉じ込めるのが難しくなるのです。ですので、塩は必ず直前にふります。塩をふらずに焼いて、焼き上がってから塩をふるのもおすすめです。
3.強火で両面を素早く焼き、表面に焼き色を付けます。焼き色をつけることで、肉の表面を固めて、肉の中に肉汁を封印する効果があります。
4.焼き色がついたら火を弱め、好みの焼き加減に仕上げます。このとき、ドライエイジングビーフのステーキの場合は、新鮮な牛肉のステーキより火が通るスピードが速いので、焼き過ぎないように注意します。
5.焼き上がったステーキを、できれば温めた皿に取り出し、休ませます。休ませる時間は焼いた時間と同じくらいを目安にするといいでしょう。ステーキを十分に休ませることで、肉汁が落ち着くので、カットしたときに肉汁が大量に流れ出るのを防ぐことができます。
おわりに
ドライエイジングビーフのうまみと熟成香は、和牛グルメファンも気になるところですよね!
ただ、ドライエイジングビーフは生肉を長期熟成するので、衛生面にも気をつけたいところです。
ですので、ドライエイジングビーフを購入したり、外食先で食べるときには、ぜひ熟成について知識があり信頼できるお店やレストランを選んで、安心して味わいたいですね。
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